高い専門性と人材育成
(1)技術力プラス説明力
設備管理・保全は高度な設備を使いこなし、その価値を最大化する役割を担っています。さらに、経営層に対して合理的な設備投資や改善施策の判断材料を提供できるのは設備管理・保全であり、企業経営への貢献度は非常に大きいと言えます。
だからこそ、設備管理・保全には単なる技術力だけではなく、成果を見える化し、経営層に納得性の高い説明を行う能力が求められます。この能力は人材育成において重要な項目として位置付けるべきであり、設備管理・保全の価値を明確に伝えるために不可欠です。
実際、予防保全によって数百億円規模の効果を生み出した事例があるにもかかわらず、経営層から十分な評価を得られなかったケースも報告されています。今後は複合的な知識を活用し、経営層に対して納得性の高い説明ができる体制の整備が求められます。
そのための取組みとして、年間の設備管理・保全活動を取りまとめた「白書」や「年報」を制作し、社内に報告する事例もあります。また、社内全体の設備管理・保全リテラシーの向上も重要です。
さらに、経営層への説明においては、事業継続計画(BCP)の視点を取り入れることが有効です。企業によっては、設備管理・保全部門が主体となり、経営層に対して設備管理・保全に関する説明会を開催している事例も見られます。加えて、「モノづくりは人づくり」という理念を盛り込み、人材育成と設備管理・保全活動の重要性を結び付けて発信することが望まれます。
(2)設備管理・保全業務の高度化への対応
技術の進化に伴い、設備管理・保全業務に求められる専門性は急速に高度化しています(図表―7)。最新の生産設備や自動化ラインには、制御機器、センサー、AIによる異常検知機能などが組み込まれており、設備管理・保全担当者には設備知識に加えて設備データの解析力など、広範かつ高度な専門知識が求められています。

図表―7 設備管理・保全の増加した重点施策
(「2024メンテナンス実態調査報告書」,2025,JIPM,より作成)
企業全体で設備管理・保全の重要性が共有され、「設備管理・保全がPQCD(生産性、品質、コスト、納期)を決定する」「設備管理・保全は設備のプロフェッショナル」といったキーワードを軸にした設備管理・保全を「ものづくりの中核」と位置付けた人材の育成こそが、企業にとって喫緊の課題であるといえます。
設備管理・保全業務の付加価値向上(業務効率化)
(1)DXによる設備管理・保全業務の変革
これまで述べたように、設備管理・保全は生産活動を支える企業のコア業務です。しかし、点検、記録、事務作業などのルーチン業務も多く含まれ、それらが設備管理・保全全体の評価や魅力を損なう要因となる場合があります。これらの業務はデジタル技術を活用した効率化が可能であり、改善が期待されます。
そして、設備管理・保全の本質は設備の信頼性を高め、生産性・品質・安全性を確保し、企業の収益や競争力向上に直接貢献することです。これらに貢献する真のコア業務は、デジタル技術を活用することで、これまで実現できなかったことが実現できることも含め、より高付加価値化できます。
具体的には、設備へのセンサー設置による温度・振動・電流データのAI解析を通じた異常兆候検知や、設備管理・保全管理システム(CMMS:Computerized Maintenance Management System)によるデータの有効活用などが挙げられます。
(2)外注戦略と社内リソースの最適化
設備管理・保全業務の効率化には、適切な外注化と外注先との連携が重要な戦略となります。すべての設備管理・保全業務を社内で完結させることは、人的リソースや技術力の面で限界があります。専門性の高い業務や定型的な作業は外部委託によって、社内リソースを重要な業務に集中させることが可能です。
近年の人手不足の影響は外注先にもおよんでいます。外注先の人員不足や技術力の低下が進めば、委託業務の品質や納期に支障が生じ、結果として自社の設備管理・保全効率化を妨げるリスクがあります。したがって、単なる業務委託にとどまらず外注先の人材育成を支援し、技術・技能の底上げを図ることが不可欠です。
さらに、外注先に過度な業務負荷がかからないように、工事時期の平準化やスケジュールの調整も重要です。加えて、作業環境の改善を含め、働く環境整備にも配慮することで、長期的な信頼関係を構築できます。
このとき、適切な外注管理がポイントとなります。外注業務の詳細や適正な工数・費用に関する知見を持つ社内保全キーマンの存在は不可欠であり、これが不足すると、設備だけでなく業務自体が「ブラックボックス化」するリスクがあります。
以上のように、外注は単なる設備管理・保全業務の効率化やコスト削減のためではなく、社内外のリソースを最適化し、持続可能な設備管理・保全体制を構築するための重要な取組みと言えます。
(3)設備管理・保全業務の付加価値の再定義
設備管理・保全業務は、経験や暗黙知に依存しやすく、属人化しやすい傾向にあるため、業務プロセスの見直しと標準化も効率化のポイントです。業務効率化は、単に作業時間を短縮するだけでなく、設備管理・保全業務の「付加価値」を再定義することでもあります。たとえば、設備管理・保全担当者が設備の改善提案を通じてエネルギー消費量削減や生産性向上を実現した場合、それは単なる設備管理・保全ではなく、経営への貢献と捉えるべきです。
このように、DX、外注戦略、付加価値の再定義などの多角的なアプローチにより、設備管理・保全業務の効率化と価値向上が十分に実現可能です(図表―8)。
| ステップ | 内容 |
| 1.センサ設置 | モニタリング:設備にセンサを設置しデータを収集 |
| 2.データ解析 | 兆候管理:AIによる異常兆候を検知 |
| 3.アラート通知 | 発報・信号:異常時に設備管理・保全員へ通知 |
| 4.記録管理 | DB化:クラウドで設備管理・保全履歴を一元管理 |
図表―8 DXによる保全業務効率化ステップ事例